「ライオスは死にたがりなのか」「ライオスの求める友情とは」

「ライオスは死にたがりなのか」「ライオスの求める友情とは」
についての話です。

ライオスは

前提として12歳で故郷の村を出て、学校卒業後兵士になるも、21歳の時になじめなくて脱走兵になったという過去を持っています。
なじめなかった理由は人間関係です。

ライオスは大事にしてる本を破られたり、殴られたりしています。

そこで、人間を食い殺してくれてる魔物になりたいという夢をどこかでいだいて、期待して迷宮のある「島」に行くことにしました。

 

「魔物になりたい」
これがライオスの夢の一つです。

また

冒険者バイブル完全版では、ライオスの一番の願いが明らかになりました。
食物連鎖の一部になりたい」
このことからダンジョンに向かったのも
「魔物になりたい」あるいは「魔物に食べられて死にたい」
という願いを持っていたことが伺えます。二つは矛盾しているようですが、人間関係で悩むライオスから見ると矛盾のない願いなのです。

 

 

話は外れますが。作者の久井諒子先生の青春時代のゲームを思い出しておきます。
FF7です。先生はクラウドをトレーシングペーパーでなぞって描くほどに、野村先生の絵に憧れていてはまり込んでいたそうです。
この90年代に流行った思想があります。
ガイア理論

です。90年代は環境問題が不安視されていて、ガイア理論を持っているゲームやアニメが沢山出ました。その中でもFF7

finalfantasy.fandom.com

がガイア理論に死生観を混ぜた、人間の魂もまた地球に還る一部という考えを持っています。

 

 

 

元の話題に戻りますが、人間関係に悩み、魔物になりたいとダンジョンに向かったライオスの心境はこのガイア理論で言うと、

人間の輪の中に入れなかったらから、もっと大きな生命の輪である食物連鎖の一部になりたい

 

 

という気持ちなのです。
一方で、友達が欲しい、理解者が欲しい、というライオスの願いは本編で無事叶っています。
理解者はファリンでは駄目なのか?ということについては、もともとファリンを迫害する村人に対する不信感で生まれた感情なので、自分もファリンも包み込んでくれるような存在でないといけません。

冒険者になってからシュローがその相手だと思って、ライオスは接していましたが、

シュロー視点ではライオスは苦手でやっかいな存在だったという事が分かります。

ここまでしてくれたら、友達だと思うんですけどね…
ライオスにとっては理想のシュローが崩れたので、友情は終了しました。


夢魔の回では、この「死ぬなよ」と言って別れたシュローより「お前の事を苦手に思っていた」シュローが優先して出てきます。

ともかく、ライオスの認識だと自分はずっと友達がいないというまま、ダンジョンの奥へ奥へと潜っていきます。
最終巻で悪魔を倒した後に、ライオスは皆から賞賛されて王になります。その時の食事をとる流れが、過去のライオスが欲しかった、友情そのものなのです。

シュローに抱擁されたときのライオスはまだ信じられない顔をしています。

 

王様としてライオスはファリンの肉を皆に振る舞うことで、人間の輪に入ることができたのです。
そして人間の輪の中で国王として生きていく事になります。

 

なので
「ライオスは死にたがりなのか」
については
「ライオスは魔物に食われて食物連鎖に入りたいという欲望があるけれど無駄死にしたいのではない」

 

「ライオスの求める友情とは」
については
「この漫画の中で模索しつつも旅の中で手に入れたのが友情で国おこしになる」
という英雄の話なのです。

 

伝説はここから始まったという王の話です。
だからダンジョン飯の中ではいろんな武器にほぼ名前がありません。
ライオスのケン助とマルシルのアンブローシアとセンシの鍋や包丁が伝説の武器に後々なる、この時点では無銘に近い存在です。
数百年後、ライオスの興した国では、伝説となったライオスと、伝説の武器たちとして残る冒険を語る品々が散開している事でしょう。

 

ダンジョン飯およびダンジョン飯ワールドガイド冒険者バイブル完全版より画像を引用いたしました。

book.dmm.com

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ライオスはいつもおいしい味のダンジョン飯を食べているのか

ダンジョン飯の最終回までのネタバレを含みます。


先日の久井先生のサイン会で驚いたとともに、今までの設定と矛盾していないなと考えなおしたことがあります

-ライオスは別におにぎりが好きなわけではない

ということです。
正確に言うと

 

Q.(久井先生が色紙におにぎりを思い浮かべるライオスの絵を描いてくれたので)ライオスはおにぎりが好きなんですか?
A.別にそんなことはない


みたいなQAです。

おにぎりが好きではない。
よく見てみてると6巻のところに出てきたおにぎりをライオスは食べていない気がします。正確にはずっとハーピーの卵焼きをもって歩いている感じ。
おにぎり食べてないとしたら、あんまり好きな味じゃなかったからなのかな…。

ライオスたちの食事シーンってとても楽し気に描かれているので勘違いしがちですが、ライオスはいつもおいしいと思ってむしゃむしゃ食べているわけではなく、興味があって、これはうまいとかこれはいまいちとか感じながら食べています。なんでもうまいみたいなキャラではないですね。魔物が好きだからそのうち味も見てみたくなって、っていうのは本当で、魔物がおいしいからますます大好きなのではない。魔物好きの一環として味も知りたい。

 

ずっと黙っていたが 俺は魔物が好きだ
姿や鳴き声 どんな生態をしてるのか
そのうち味も知りたくなった
一巻23ページ


おにぎりの話に戻るんですが、

うまい

六巻85ページ

ってシュローが言ってるので、おにぎりおいしそうって読者が見た感想に加え、みんなの食事がわいわいしてるので、きっとおいしく食事を楽しんでるのだと私も初見は思っていました。
でもライオスにとってはおにぎりはあの状況でもめちゃくちゃおいしいとか思ってないです。(そもそも食べてない可能性が高い)
シュローに

どうだシュローやはりここでは飯を食った俺のほうが強い!!
六巻84ページ


と食べてることが重要というんですけど、「うまいから食べて」とかは言ってない。
シュローが兵糧丸を食べていることがネガティブに書かれていましたけど、ライオスの考えだと、本人もダンジョンでの食事の姿勢はおいしいものをしっかり食べてるっていうよりは、おいしくない時もあるけど、食べないとやってられないぐらいの感覚だと思います。
あったかい飯は具合がよくなるし、センシの言葉では

なぜお前の作った物だけはよく食べたか
そこに何が入っていたのか
わしにはわかるぞ
愛情というやつだ
六巻24ページ

って言ってるけど、ライオスも味の良しあしで食べる/食べないを選んでないです。


ここまでで「ライオスはダンジョンで食べる魔物食がおいしくてたまらないってわけではない」という姿勢でいることがわかったらいいなと。


マルシルに

「食べてごらんマルシル
たぶんキミの好きな味だよ」
一巻60ページ


って誘うんですけど、マルシルはおいしいよって誘わないと食べてくれないのでこういう話し方で勧めたという感触です。
どうしてそこまで勧めるかというと、マルシル自身の身体のためです。ダンジョン内で腹が減ると困ることが起きるから、現状では食べたほうがよくて、マルシルが少しでも食べやすいように工夫しているんです。マルシルの本当の心情を理解しているっていうよりは、ライオスはブラックボックスに何をインすると何がアウトで返ってくるかある程度知っていて、その反応をもとに会話しているのだと。

11巻の


「迷宮を彷徨ってると時折暗い気持ちに支配される、だけど食事の時間は忘れられた、というより考える暇がなかった」
十一巻56ページ


というライオスのモノローグがあって、食事がおいしいから好きなわけではなく、もっと嫌なことから逃げる方法として食事を選んでる感じがします。ダンジョン内でネガティブになるから、「食事イコール前向きな行為」って感じていて食事をとるけど、それ以上の味については、うまい/まずいで終わるものではない。

一方嗜好品であるチーズケーキについては

-無限に腹がへるのでどこまでもチーズケーキを食べられる

とQAにありました。嗜好品としての食事とケの日の食事を分けて考えているのかなと。
(ケの日とは日常の日のことで、年中行事や儀式、お祭りなどの日をハレの日っていうのに対する対義語です。成人式をハレの日って言ったりしますね)
ライオスは

「(好きな食べ物は)魔物じゃないのかよ」
十二巻185ページ

ってカブルーに突っ込まれていましたけど、おいしいものは地上のレストランの食事であって、生きるためにダンジョンでケの日の飯を食べている。

おいしい食事万歳!な主張ではなくて、食事が好きでも嫌いでも食べるといいことがあるみたいな落ち方です。
最終巻のイヅツミの言葉もかさなりますね。

「食べたくもないものを食べないといけない日は誰にでもあるんだ…」
十四巻101ページ


ダンジョン飯の食事をコンセプトカフェでいただくとハレの日の特別な料理に感じるんですが、漫画の中ではケの日の食事に近いんです。最終巻のファリゴンをみんなで食べるのはお祭り要素があるので、ハレの日に当たりますね…。

ライオスが言いたいテーマは
「食事はおいしくて、幸せ」
ではなく
「辛いこともあるけど、生きるために食べていこう。食事を怠けて抜くのはやめよう。それが自分のためになるから」
がまとまっていると思います。

いつもおいしそうに食べてるように見えるのは、センシも6巻で言っていたけど、愛情が料理に降りかかっていて、ライオスがワイワイ仲間と食べているので、実際の味というより雰囲気がおいしいのじゃないかなと。

サイン会のQAでも


Q.ダンジョン飯のテーマは?
A,ご飯をよく食べよう

 

ってあって、おいしく食べようではないんですね。

次回があったら「ライオスは死にたがりなのか」「ライオスの求める友情とは」の繋がりについてお話したいと思います。